GRADIUM™
この面タイプは、LightPath Technologies, Inc. 社より入手可能な市販の分布屈折率ブランクから製作したレンズをモデル化します。面の形状は、標準面と同じです。このブランクには軸方向の分布屈折率プロファイルがあり、ガラス ブランク内の軸位置の関数として基準屈折率を記述できます。レンズを定義するために必要な値は、ブランク内部での開始位置、市販ブランクのプロファイル名、そして当然のことながら、曲率半径と厚みです。GRADIUM 面には、以下の多項式で表される分布屈折率プロファイルがあります。
z 座標は、面の前方の頂点からの距離であり、zmax はブランクの最大 z 座標 (ブール厚としても知られる)、さらに値 Δz はプロファイルに沿う「オフセット」距離です。OpticStudio 内の他のほとんどの分布ガラス モデルとは異なり、GRADIUM 面は固定されあらかじめ定義された軸プロファイル係数のみを使用します。 必要な設計パラメータはオフセット値 Δz のみです。OpticStudio で提供される使用可能なプロファイルは、ASCII ファイル PROFILE.GRD で定義されます。他のプロファイル ファイルは、拡張子を GRD として、<glass> フォルダに保存することで定義できます (「[フォルダ] (Folders)」を参照)。
別のプロファイル ファイルを選択するには、「[GRADIUM™ プロファイル] (GRADIUM™ Profile)」を参照してください。使用可能なプロファイルのリストについては、「[Gradium™ プロファイル] (Gradium™ Profile)」を参照してください。
GRADIUM プロファイルのファイル形式
ファイル形式は、以下のように定義される 13 行のデータからなる一連のブロックです。
PROFILE_NAME GLASS_FAMILY MAX_Z DENSITY UNUSED n0 n1 ... n11
各データ ブロックは、20 文字未満の有効な ASCII 名であるプロファイルの名前で始まります。同じ行に、分布 5 面タイプのセクションで説明される SGRIN.DAT ファイルで定義される分布屈折率材料であるガラスの分類名が続きます。ガラスの分類名は、プロファイルで説明する基準波長を定義します。その行の最後は、ブランクの最大 z 座標を入力します。12 個の多項式係数 n0 ~ n11 が続きます。プロファイルで許可される最大数は 100 です。
OpticStudio が光線追跡を行う場合、面のローカル z 座標 (負でもよい) が計算されます。その後オフセット値が加えられ、座標がプロファイル内のどこにあるかが決定されます。
通常、結果の値は常に正であり最大 z 値以下であり、そうでない場合にはエラーが生成されます (後述の「キャッピング」の説明を参照)。そして、基準屈折率が評価されます。基準屈折率が計算されると、分布 5 面のセクションで説明される技法を使用して、追跡されている波長における屈折率が計算されます。
前方の頂点における基準波長屈折率は、パラメータ 3 として表示されます。この値は、レンズ データ エディタ内で変更できます。新しい値を入力すると、OpticStudio は適切な Δz を計算して指定の基準屈折率を生成します。しかし、重要な値は Δz です。基準屈折率は、便宜上表示されるだけであり、可変またはマルチコンフィグレーション オペランドにすべきではありません。基準屈折率は、ガラスの分類を定義するファイル SGRIN.DAT で定義される基準波長における頂点の屈折率です。これは必ずしも主波長ではありません。
GRADIUM 面モデルでは、公差解析に使用する 4 つの追加パラメータ項として、X 方向のディセンタ、Y 方向のディセンタ、X 軸のティルト、Y 軸のティルトも扱うことができます。これらの 4 項を使用すると、中心がローカル Z 軸と完全には一致せず、ローカル Z 軸と完全には平行でない傾斜した軸をモデル化できます。公差の項は、軸座標 z を次のように再定義することにより、軸のプロファイルを修正します。
ここで、
であり、tx、ty、tz は軸分布軸に沿う方向を指す単位ベクトルの係数、dx と dy はプロファイルの開始のディセンタをレンズ ユニットで表したものです。tx と ty が両方ともゼロの場合、dx と dy の値は問題ではなく (分布が z 軸のみに沿うため)、tz 値は 1 です。項 tx と ty は、x 方向と y 方向のプロファイル軸の傾斜を決定し、この傾斜は、レンズの分布軸と機械軸の間の位置合わせの公差をモデル化するものです。この式は、漸近的に小さい tx と ty にのみ有効な線形近似です。
近軸光線追跡を実行する場合には、公差の項 dx、dy、tx、ty は無視されます。
通常、定義されたプロファイルの範囲のみが使用されます。しかし、一部の場合、プロファイルはプロファイルの最後に追加ガラスを加えるため一方向または両方向に拡張され、これによりさらに厚いレンズで GRADIUM を使用できるようになります。この技法は「キャッピング」と呼ばれます。デフォルトでは、OpticStudio はキャッピングをオフにするため、プロファイルの限界を超えるガラスを要する光線追跡はエラーとしてフラグが付けられます。これにより、最適化の間に境界の制約が自動的に強制されます。この制約を取り除くには、キャッピング フラグを 1、2、または 3 に設定します。デフォルト値であるゼロは、ブランクが両端でプロファイル長で固定されることを示します。キャッピング フラグが 1 の場合、左端のみが固定されます (右端はプロファイルの制限を超えて伸びることが可能)。キャッピング フラグが 2 の場合、右端のみが固定されます。そしてキャッピングが 3 の場合、ブランクの左端も右端も固定されず、厚みとオフセットは両方とも任意の値をとることができます。プロファイルの始めと終わりに追加される追加材質は、プロファイルの各終了点と同じ屈折率と分散を備えた均質ガラスと仮定します。この仮定は、定義された終了点においてプロファイルに対してある程度の傾斜がある場合には不正確な場合があり、これが通例です。GRADIUM キャッピングを使用した設計に関する詳細については、LightPath Technologies 社にご連絡ください。
すべての GRADIUM プロファイルは、「正」と「負」のペアで定義されます。これらは同一のプロファイルであり軸方向に反転されます。ダブル パスでレンズをモデル化する場合、前方パスでは一方のプロファイルを使用し、もう一方 (反転) のプロファイルを後方パスに使用する必要があります。
最大ステップ サイズΔt によって、光線追跡の計算速度と精度のトレードオフが決まります。詳細は、「GRIN 面の最大ステップ サイズの説明」を参照してください。また、「GRIN 面に続く面の制約」も参照してください。
GRADIUM 面のパラメータ定義
パラメータ番号 | 定義 |
0 | ブール厚 |
1 | Δt |
2 | Δz |
3 | n_ref |
4 | dx |
5 | dy |
6 | tx |
7 | ty |
8 | キャッピング |
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