[Lightning Trace] (Lightning Trace)


この機能は、Ansys Zemax OpticStudio の Premium Edition と Enterprise Edition でのみ使用できます。
[LightingTrace コントロール] (LightningTrace Control) を使用すると、定義済みの光源、オブジェクト、ディテクタの下で、解析を目的として独立したメッシュから特定の光線セットを送出して追跡できます。このダイアログにある各種コントロールについて以下で説明します。

[光線サンプリング] (Ray Sampling) 光線の送出に使用する初期メッシュの定義で使用するサンプリング数。
[エッジ サンプリング] (Edge Sampling) オブジェクトのエッジをメッシュで解決する際に使用する精度の定義に使用するサンプリング数。
[光線追跡の実行] (Trace) 定義したすべての光源から送出したメッシュ光線の追跡を開始します。光線追跡の開始前に、すべてのディテクタが自動的にクリアされます (すべてのディテクタのすべてのピクセルが、エネルギーを保持していない状態にリセットされます)。
説明 :
この機能では、高度な光線補間技術 (特許出願中) を使用して、数百万本もの光線を追跡せずに、すばやく照度パターンを推測します。この機能で目的としている用途は、概略の照明パターンをきわめて短時間で決定して、照明光学系の初期設定と初期設計を、従来の光線追跡を使用する場合よりもはるかに速く遂行できるようにすることです (詳細については「[光線追跡コントロール] (Ray Trace Control)」を参照)。
LightningTrace を使用すると、定義した各光源から特定の光線群が発して追跡されます。光線が発する方向は、光源を包むメッシュ上で選択されます。この解像度は、[光線サンプリング] (Ray Sampling) で [Low (1X)] から [1024X] の範囲で定義します (なお、メッシュ サイズを 2 倍にすると、メッシュの数は 4 倍になります)。各メッシュを出発するすべての光線は、そのメッシュを光源としたときにその中心に相当する同じ位置から出発します。したがって、LightningTrace では各光源のサイズと空間分布は無視され、光源を遠視野で記述することによって各光源を表現します。
OpticStudio では、光学系で光線を追跡するときに、光源から任意のディテクタまでの経路上にある各オブジェクトを十分な数の光線が通過できるように、必要に応じてメッシュの細密度が自動的に調整されます。[エッジ サンプリング] (Edge Sampling) の入力を使用して、オブジェクトのエッジに適用される細密度調整の程度をユーザー側で制御できます。この入力も [Low (1X)] から [1024X] の範囲で選択できます。
メッシュを出発した光線は通常の方法で追跡されます。メッシュ光線は正反射光線の経路のみをとることができ、メッシュ光線の分割や散乱はできません。メッシュ光線の追跡では、偏光による効果も考慮されません。最後に、各光源の総合的な色 (三刺激値) は、遠視野角に伴う色の変化も含め、光線追跡中も維持されますが、メッシュ光線の追跡では各光源のスペクトル分布が無視され、光源の平均波長が使用されます。
LightningTrace 解析で使用する光線の初期メッシュ (OpticStudio によるどのような自動調整も適用されていない段階で生成されたメッシュ) は、NSC 3D レイアウトと NSC シェーデッド モデルで確認できます (「[NSC 3D レイアウト] (NSC 3D Layout)」および「[NSC シェーデッド モデル] (NSC Shaded Model)」を参照)。なお、メッシュを発する各光線の強度は一定ではありません。任意の角度領域での光線強度は、その領域での光源の遠視野強度で求められます。
LightningTrace 解析の結果は、ディテクタ (矩形)、ディテクタ (色)、ディテクタ (極) の各オブジェクトで確認できます (「NSC ディテクタ」を参照)。これらのディテクタの結果を確認するには、そのディテクタを光学系の終端ディテクタとするか (そのディテクタに到達した光線がそれ以降は他のどのオブジェクトとも交差しない構成)、そのディテクタの材質を「ABSORB」に設定する必要があります。また、ディテクタ (矩形) オブジェクトとディテクタ (色) オブジェクトで確認できる結果は空間データのみですが、ディテクタ (極) オブジェクトを使用すると角度データを取得できます。これらの結果は、ディテクタ ビューアに通常の方法で表示できます (「[ディテクタ ビューア] (Detector Viewer)」を参照)。
ほぼすべての光源が LightningTrace でサポートされています。なお、光源 (DLL)、光源 (インポート)、および光源 (オブジェクト) の各オブジェクトで定義した光源は、LightningTrace でサポートしていません。このような光源では、光源のサイズと空間分布が光学系設計で重要な要素となることが普通です。したがって、このような光源を持つ光学系のモデル化では LightningTrace は不向きです。LightningTrace が対応していない光源を持つ光学系は、LightningTrace では解析できません。
使用上のヒント
LightningTrace の最大の利点は処理速度の速さにあります。メッシュからの光線のみを追跡するので、光学系で追跡する光線の本数が、従来の光線追跡と比較して大幅に少なくなることが一般的です。高度な光線補間技術を使用して、メッシュ間の領域での光学系の応答を計算することでメッシュ光線の挙動を推算します。LightningTrace では、上記のように光学系の性能を近似して扱っているので、ホット スポットなどのアーチファクトが解析結果に発生することがあります。ホット スポットが発生しやすい例として、対称な光学系 (軸上光学系など) を LightningTrace で解析した結果を、奇数個のピクセルで構成したディテクタで表示する場合があります。一方、多くの一般照明と照明光学系では、LightningTrace で使用する近似手法が有効です。このような光学系では、LightningTrace を使用すると、光線追跡と最適化の速度が従来の光線追跡と比較して桁違いに速くなることがあります (この場合の最適化では NSLT オペランドを使用します。「最適化オペランド」を参照)。
LightningTrace が良好に機能する光学系とは、その設計上、すべての光源のサイズと空間分布が重要ではない光学系です。光源自体が十分に小さいか、すべての副次光学系から光源が十分に遠い位置にあることで、この条件が成立します。たとえば、きわめて小さい LED 光源を複雑な遠視野分布パターンで搭載している光学系をモデル化するには、LightningTrace が適しています。したがって、建築照明、街路照明、道路照明をはじめとする LED 照明光学系の設計では、LightningTrace が理想的なツールになり得ます (道路照明の設計に効果的な各種ツールの説明については「[道路照明] (Roadway Lighting)」を参照)。
正確さを要求される照明光学系 (光源の像をディテクタに形成する光学系など) や、いずれかの光源のサイズと空間分布が重要な光学系 (LED コリメータやビーム エクスパンダなど) で使用するツールとしては、LightningTrace は適切ではありません。また、ディフューザなどの散乱性部品を備えた光学系や、回折格子などによって顕著な分散特性を持つ光学系でも、LightningTrace では正確な結果が得られません。最後に、LightningTrace では、光学系に存在する平行ビームを完全にモデル化することはできません。上記のような光学系は、従来の光線追跡で設計する必要があります。
LED 照明のように LightningTrace が適切な光学系の設計では、LightningTrace が高速な仮想試作ツールとして機能します。このような光学系では、設計入力による光学系の性能変化をリアルタイムで確認できるビジュアル最適化機能 (「[ビジュアル最適化] (Visual Optimization)」を参照) により、LightningTrace をきわめて効果的に利用できます。設計の進捗に伴い、従来の光線追跡解析を必ず実行し、LightningTrace 解析を検証する必要があります。
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