ガウシアン求積法
GQ アルゴリズムでは、均一に照射した入射瞳で RMS 誤差または PTV 誤差を正確に計算するために、慎重に選択して重み付けした光線設定を使用します (厳密にいえば、PTV アルゴリズムは GQ アルゴリズムではありませんが、互いによく似ています)。システム エクスプローラで波長および視野に設定した重みに従い、GQ 評価関数アルゴリズムですべての光線に重み付けが適用されます。RMS 評価関数では、G. W. Forbes による論文『JOSA A 5』、p1943、1988 に示されている手法に基づいて重み付けと光線設定が選択されます。PTV 評価関数では、Cambridge University Press の『Numerical Recipes』 (1989) に示されているチェビシェフ多項式の解に基づいて光線が設定されます。これらの方法の基礎と正確性の詳細については、上記の参考資料を参照してください。GQ は、その他の既知のどの方法よりも正確であり、必要な光線も少なくてすみます。したがって、計算速度と正確性の両面で優れた結果が得られます。
GQ の唯一の欠点は、そのアルゴリズムの性質上、瞳が円であるか、より一般化して楕円であると見なされることです。瞳が楕円ではない場合、GQ では正確な結果が得られなくなります。 たとえば、実質的な瞳の形状が大幅に変化するくらいに光線がビネッティングされる面アパチャーを使用した光学系では、GQ を使用しないようにします。
この例外として、ニュートン反射望遠鏡など、中央遮蔽がある円形瞳を使用する光学系があります。この場合は、遮蔽される瞳の比率を示す入力値 (遮蔽率) を指定します。GQ アルゴリズムで円形瞳の遮蔽を考慮する手法については、B.J. Bauman と H. Xiao 共著の『Gaussian quadrature for optical design with non-circular pupil and fields, and broad wavelengths』、Proc.SPIE、Vol. 7652、 p76522S-1 (2010) に説明があります。瞳の中央近辺では収差が少なくなる傾向があるので、中央遮蔽が比較的少なければ RMS に大きな影響はありませんが、GQ アルゴリズムで有限な「遮蔽」率を使用することにより、評価関数の計算で遮蔽を全面的に正確に表現できます。
GQ でビネッティング ファクタを指定すると、光線パターンの分布が円形から楕円に変更されるので、GQ が効果的に機能するようになります。ビネッティング ファクタを指定して GQ を使用する方法についての詳細は、ナレッジ ベースの記事「How to use Vignetting Factors (ビネッティング ファクタの使用方法)」を参照してください。
GQ アルゴリズムでは、リングの数、アームの数、および遮蔽率の指定が必要です。
[リング] (Rings) 視野ごとおよび波長ごとに追跡する光線の本数を指定します。軸上視野 (回転対称光学系で視野角が 0 °の場合) では光線数はリングの数と等しくなります。対称光学系にある他のすべての視野では、追跡するリングあたりの光線数は、次で説明するアームの数の半分になります。光学系の左右対称性を利用するので、実際に追跡する光線の本数はこの半分になります。定義した波長ごとに光線の各セットを追跡します。たとえば、1 つの軸上視野、2 つの軸外視野、3 つの波長、4 つのリング、および 6 つのアームを選択すると、追跡する光線の本数は 3 × (4 + 4 × 3 + 4 × 3) = 84 となります。回転対称でない光学系では、視野に関係なく、リングあたりの光線数はアームの数です。前出の例では、3 × 3 × 4 × 6 = 216 本の光線となります。OpticStudio では、これらの値が自動的に計算されます。ここでは、デフォルトの評価関数がどのように定義されるかを理解できるように、この値について説明しています。追跡する光線の本数が増加するほど、最適化に時間を要するようになります。
[アーム] (Arms) 瞳の中で追跡する光線の半径方向のアームの数を指定します。デフォルトでは、等角度の間隔で置いた 6 本のアームを追跡します (光学系が回転対称の場合は 3 本)。この値を 8、10、または 12 に変更することもできます。ほとんどの光学系では 6 本で十分です。
リングおよびアームをサンプリングする際の考慮事項
光学系に存在する収差の次数に応じてリングの数とアームの数を選択します。GQ アルゴリズムで正確に積分できる収差の最高次数は (2 × n - 1) です (n は、リングの数)。5 次までの横収差に制限する光学設計では、n を 3 以上にする必要があります。適切なリング数を簡便に判断するには、まず最小値である 1 を選択します。つづいて、最適化ダイアログ ボックスで評価関数を確認します。デフォルトの評価関数に戻り、リング数を 2 にします。この変更によって評価関数が数パーセント以上変化する場合は、リング数として 3 を選択します。評価関数が大きく変化しなくなるまで (1% 程度)、この手順を繰り返します。この手順をアームの数だけ繰り返します (ほとんどの場合、6 本のアームで十分です)。リング数やアーム数を必要以上に大きくしても、最適化した性能は向上せず、アルゴリズムの動作が遅くなるだけです。必要以上の光線を追跡しても優れた解が得られるわけではありません。
リング数やアーム数を必要以上に大きくしても、最適化した性能は向上せず、アルゴリズムの動作が遅くなるだけです。
[遮蔽率] (Obscuration) 円形瞳をビネッティングする比率を指定します。これは、瞳の中で光線を追跡できない領域の比率です。デフォルト値は 0 で、遮蔽を想定しません。指定できる最大の値は 1 で、瞳全体が遮蔽され、光線をまったく追跡できなくなります。OpticStudio では、評価関数で光線を定義できない状況を避けるために、[遮蔽率] (Obscuration) に指定した値の絶対値が 1 以上であると、それが自動的に 0 にリセットされます。
注 : 円形の瞳の遮蔽率は直径に対する比率で表します。瞳の面積に対する比率ではありません。つまり、瞳の面積に対する遮蔽の比率は入力値の 2 乗になります。遮蔽の中心は円形瞳の中心です。
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