散乱モデル
散乱モデルは確率分布関数として定義します。OpticStudio で光線を散乱させる場合は、新しい伝搬方向を選択します。その方向は、確率関数と 1 つまたは複数の乱数で決まります。多数の光線を追跡した場合、得られる散乱光線の分布が実質的に確率分布関数に近づきます。散乱モデルとして選択できるオプションは、[なし] (None)、[ランバーシアン] (Lambertian)、[ガウシアン] (Gaussian)、[ABg] (ABg)、[ABg ファイル] (ABg File)、[BSDF] (BSDF)、[ユーザー定義] (User Defined) の 7 つです。使用可能な各散乱モデルを以下にまとめますが、詳細な技術的解説は「散乱」を参照してください。
[散乱なし] (No Scattering) : デフォルトの散乱モデルは、散乱が一切発生しないこのオプションです。得られる光線は、非散乱光線または、面が実際には反射性でなくとも「正反射」光線と呼ばれます。単位入射放射照度あたりの散乱放射輝度を表す、双方向散乱分布関数 (BSDF) はゼロになります。
[ランバーシアン] (Lambertian) ランバーシアン散乱モデルでは、散乱光線の投影ベクトルが単位円内のあらゆる場所で同じ確率を持ち、BSDF は 1/π になります。散乱強度は法線ベクトルと散乱光線がなす角度の余弦に比例します。ランバーシアン散乱は、光線の入射角に依存しないことに注意してください。ほとんどの拡散面は、ランバーシアンとほぼ同じ散乱特性を示します。ランバーシアンはシーケンシャル面のダイアログでも選択できるオプションですが、このモデルによる散乱光線は前方のあらゆる方向に伝播できます。このため、散乱角が大きくなり残りの光学系で正しく伝播しなくなる可能性があります。
[ガウシアン] (Gaussian) ガウス散乱モデルの散乱分布は、正反射光線と面の法線がなす角度にかかわらず、方向余弦空間で回転対称になります。 BSDF の式 (「散乱」を参照) には、投影平面上のガウス分布の幅を決める無次元の値 σ が含まれます。σの値が約 5.0 を超えると、BSDF はランバーシアン分布とほぼ同じになります。そのため、設定可能な最大値は 5.0 です。
[ABg] (ABg) ABg 散乱モデルは、BSDF の定義に広く使われている手法です。散乱が、おもに等方性のランダムな表面粗さに起因し、粗さの大きさが散乱光の波長に比べて小さい場合に、一般的に良好な結果が得られる散乱モデルです。通常、これらの前提は研磨された光学面に当てはまります。技術的な詳細については「散乱」を参照してください。
[ABg ファイル] (ABg ファイル) ABg 散乱モデルでは、ABg プロファイルの合計によって面の散乱特性を定義できます。使用するプロファイルはテキスト ファイルで指定します。このテキスト ファイルは拡張子を .ABGF として、<data>\ABg_Data フォルダに配置する必要があります (「[フォルダの設定] (Folders)」を参照)。ABGF ファイル内で指定するプロファイルは、すべて現在ロードされている ABg データ ファイル内で定義済みである必要があります ([ABg データ ファイル] (ABg Data File) を参照)。また、ABg データ ファイル内のプロファイル名が大文字または小文字のいずれであるかに関係なく、プロファイルはすべて大文字で指定する必要があります。
[BSDF] (BSDF) BSDF 散乱モデルでは、表形式の BSDF データによって面の散乱特性を定義できます。データはテキスト ファイルで指定します。ファイルは、「Zemax Tabular BSDF data file format」という記事で説明される、Zemax の表形式の BSDF データ ファイル形式に従う必要があります。OpticStudio ナレッジベースで参照できる 「Zemax Tabular BSDF data file format – Knowledgebase」を確認してください。OpticStudio では、反射と屈折を別々の BSDF データで定義できます。正反射光線が反射または屈折した場合、その後の光線は適切な入力ファイルのデータに従って散乱します。ファイルをこの散乱モデルで使用できるようにするには、ファイル フォーマットの解説記事に示したとおり、拡張子を .BSDF として、<data>\Scatterdata フォルダに配置する必要があります (「[フォルダの設定] (Folders)」を参照)。モデルの詳細および使用法については、OpticStudio の Web サイトよりナレッジ ベースの記事「表形式の BSDF データを使用して面散乱分布を定義する方法」を参照してください。
[ユーザー定義] (User Defined) 散乱 ダイナミック リンク ライブラリ (DLL) と呼ばれる外部プログラムを使用して、汎用性の高い表面散乱を定義できます。OpticStudio に付属するサンプル DLL にはソース コードが用意されています。新しい DLL は、適切なコンパイラを使用すれば簡単に作成できます。「DLL に関するコメント」も参照してください。
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