[レイ エイミング] (Ray Aiming)
レイ エイミングはシーケンシャルモードでのみ使用できます。


これらの [レイ エイミング] (Ray Aiming) 機能は、[システム エクスプローラ] (System Explorer) で使用できます。 コントロールは、レイ エイミング アルゴリズムを定義します。


[レイ エイミング] (Ray Aiming) :
レイ エイミングは、OpticStudio の反復的な光線追跡アルゴリズムで、特定のサイズを持つ絞り面を正確に満たす光線を物側で見つけます。これは通常、物空間から見える絞りの像である瞳が、大幅に逸脱しているか、シフトしているか、あるいはティルトしている場合にのみ必要になります。
[レイ エイミング] (Ray Aiming) をオフ
レイ エイミングをオフにした場合、OpticStudio ではアパチャー設定で決まる近軸入射瞳のサイズと位置を使用します。これらの値は、物体面から光線を射出する軸上で主波長について計算します。これは、OpticStudio が入射瞳収差を無視することを意味します。適度な視野角を備えた遅い光学系の場合、これは何ら問題ありません。しかし、F ナンバーが少ない光学系や視野角が大きい光学系などの一定の光学系では、入射瞳収差が著しく大きくなることがあります。瞳収差の 2 つの主な効果は、視野角による瞳の位置のシフトと、瞳のエッジのアナモルフィックな縮尺です。
OpticStudio では、レイ エイミングを使用して瞳の収差を考慮するよう指示できます。レイ エイミングを使用すると、物空間内の光線の座標または余弦を調整するプログラムにより各光線追跡が反復的に実施され、光線は絞り面の正確な位置で交差します。絞り面上の正確な位置を決定するため、絞り面半径を計算する必要があります。絞り面半径は、主波長において物体の中心から絞り面までマージナル光線を追跡することにより計算されます。近軸光線または実光線のいずれかをこの追跡で使用し、絞り半径を決定します。
[近軸光線] (Paraxial) レイ エイミング
近軸光線は記述が容易な挙動を示し、近軸近似の定義は焦点距離、F ナンバー、倍率など、ほとんどの一次光学系の特性に一般的に使用されているため、絞り面のサイズの決定にも使用できます。しかし、著しく大きな収差を備えた瞳を含む光学系の場合、近軸光線と実光線の絞り半径に差が生じます。このような光学系では、実光線と近軸光線でシステム アパチャーが異なります。たとえば、近軸物空間での NA を 0.4 と定義しても、実光線の実際の NA は異なる値になる場合があります。
[実光線] (Real) レイ エイミング
システム アパチャーで定義した物空間特性を有する実光線では、近軸光線の代わりに実光線を使用して絞り半径を決定します。実光線に基づくレイ エイミングは、絞りがコースティックにある光学系や実光線を入射瞳径全体または NA で追跡できない光学系では作用しません。実光線のレイ エイミングによりこのような問題が生じる場合、レイ エイミングを実光線ではなく近軸光線に設定します。また、実光線が TIR を経験する場合、または絞りまで追跡することができない場合、OpticStudio は絞り半径を求めるために近軸光線を使用します。そしてシステム チェック レポートには、この影響に関する警告が含まれます。絞り半径が決定されると、すべての光線は、絞り半径を求めるために近軸光線が使用されたか実光線が使用されたかに関わらず、絞り面の正確な位置に向けられます。
実光線のレイ エイミングの方が近軸入射瞳エイミングよりも正確ですが、ほとんどの光線追跡は実行に 2 ~ 8 倍の時間がかかります。したがって、実光線のレイ エイミングは必要な場合と、近軸光線のレイ エイミングが瞳収差の大部分を考慮しない場合にのみ使用するものとします。
ご使用の光学系における入射瞳収差の量を求めるには、レイ エイミングをオフにし、瞳収差のプロットを見ます。数パーセント未満の瞳収差は一般に重要ではありません。ご使用の光学系が大きな瞳収差を備える場合、近軸光線のレイ エイミングをオンにし、再度瞳収差のプロットを見ます。近軸光線のレイ エイミングでも瞳収差が大きい場合には、実光線のレイ エイミング アルゴリズムに変更します。 収差はゼロまたはゼロ近くまで低下します。レイ エイミングは、当然のことながら、実際には瞳収差を排除せずに単に考慮するだけです。
実際の絞りサイズの計算の曖昧さを排除するには、レイ エイミングを近軸光線または実光線に設定し、光学系のアパチャー タイプを [絞り面半径による定義] (Float by stop size) に設定します。これにより、絞りサイズを求めるためにすべての光線追跡を行う必要がなくなり、実光線と近軸光線は両方とも実際の絞り面に正確に向けられます。
いくつかの接眼レンズなど仮想の絞り面を備えた光学系の場合、有効な絞り面の位置とサイズは波長の関数になります。このような光学系では、各波長と光学系のアパチャーの定義を個別に取り扱うために、マルチコンフィグレーション機能を使用します。
[レイ エイミングのキャッシュを使用] (Use Ray Aiming Cache) :
チェックした場合、OpticStudio はレイ エイミングの座標をキャッシュして、新しい光線追跡でこれまでの光線追跡アルゴリズムの反復を利用できるようにします。キャッシュの利用により、光線追跡の速度が大きく向上します。しかし、キャッシュを使用するには主光線を正確に追跡できることが必要です。光学系によっては主光線を追跡できないものがあるので、そのような光学系ではキャッシュをオフにしておきます。[ロバストなレイ エイミング] (Robust Ray Aiming) をチェックすると、[レイ エイミングのキャッシュを使用] (Use Ray Aiming Cache) が強制的に有効になります。
[ロバストなレイ エイミング] (Robust Ray Aiming) (低速) :
チェックした場合、OpticStudio はレイ エイミングに対してより信頼性の高い、ただし低速のアルゴリズムを使用します。この切り替えは、キャッシュをオンにしてもレイ エイミング アルゴリズムが失敗する場合にのみ設定します。このスイッチは、レイ エイミング キャッシュのチェックを入れていないと影響はありません。ロバスト モードでは、同じ絞り面の位置へ複数の光線経路が存在する場合に正しいもののみが選択されるように、さらなるチェックを行います。これは通常、レイ エイミングの反復を混乱させるような絞り面への仮想経路が軸外の視野で見つかる、非常に高速で非常に広角の光学系において問題になります。
[瞳シフト] (Pupil Shift) :
一部の非常に広角な、非常にティルトした、またはディセンタした光学系の場合、レイ エイミング機能単独では失敗します。問題は、近軸入射瞳が光線を追跡する最初の推測として使用されることです。瞳収差が深刻な場合、この最初の推測が追跡できなくても (これによりアルゴリズムは第二の推測を行うことができません)、より詳細な推測が可能です。
ソリューションは、瞳がどの程度シフトして近軸瞳に対してどの程度圧縮したかの大まかな推測を提供することです。シフトには x、y、z の 3 方向の成分があり、すべてレンズ ユニットで表します。圧縮成分には、x と y の2 つがあり、これらは無次元の縮尺ファクタです。これら 5 つすべてにデフォルト値のゼロを使用すると、アルゴリズムがレイ エイミングにおいて良好な最初の推測を見つけやすくなります
シフトは近軸入射瞳のエイミング ポイントの中心に移動します。z シフトが正の値の場合は、エイミング ポイントが近軸瞳の右側にシフトすることを示し、負の値は瞳が左にシフトすることを示します。ほとんどの広角光学系は、左にシフトした瞳を備えています。提供される z 方向の瞳のシフト値は、追跡される光線の視野角と線形的に縮尺されるため、瞳のシフトは全視野における瞳のオフセットを参照します。すべてのシフトの単位はレンズ ユニットです。
[瞳のシフトを自動的に計算] (Automatically Calculate Pupil Shifts) :
これを選択すると、OpticStudio は実光線と近軸光線の入射瞳の位置の差を自動的に計算し、瞳シフトのファクタの値を求めます。レイ エイミングがオンの場合、[瞳のシフトを自動的に計算] (Automatically Calculate Pupil Shifts) はデフォルトでチェックされています。チェックを外すと、X 方向、Y 方向、および Z 方向の瞳のシフトを手動で設定する必要があります。
絞りが物体の左側にある場合、自動計算では正確な値が得られず、自動計算による瞳のシフト量は 0 に設定されます。瞳のシフト量はユーザー側で設定する必要があります。
[視野による瞳シフト係数のスケール] (Scale pupil shift factors by field) :
選択した場合、x 方向と y 方向の瞳シフト値も視野によってスケーリングされます。選択していない場合、x 方向と y 方向の瞳シフト値はどの視野に対してもスケーリングされずに使用されます。すべてのシフトの単位はレンズ ユニットです。
[瞳圧縮] (Pupil Compress) :
x と y の圧縮値は、近軸入射瞳上の反復を開始する相対座標を変更するために使用します。 値がゼロの場合は圧縮がないことを示し、値 0.1 は瞳が 10% 圧縮されることを示します。圧縮値は、実光線の瞳が近軸光線の瞳よりも小さい場合に特に便利であり、近軸瞳のサイズ全体で光線を追跡することは困難かまたは不可能です。
瞳のシフトの正確な値と圧縮値が重要ではないことを理解することが大事です。最初の推測の光線が追跡されると、アルゴリズムは正確な瞳の位置を確実に見つけます。瞳のシフトと圧縮値は、レイ エイミングを開始させるためだけのものです。シフト値も圧縮値も、入射瞳のサイズを実際に変更しません。一般に、瞳シフトと圧縮の値の推測は、適切な値を求める上で許容された方法です。
[強化されたレイ エイミングの使用:] (Use Enhanced Ray Aiming:)
チェックすると、強化されたレイ エイミングのアルゴリズムが使用されます。このアルゴリズムは、標準のレイ エイミングや強力なレイ エイミングが適切に動作しない光学系で安定した高速な動作を実現することを目的としており、特に広視野光学系で効果的です。
強化されたレイ エイミングのアルゴリズムは、次のタイプの光学系で使用できるように設計されています。
- 全体を通して軸外し光線を追跡できる必要がある光学系。
- 絞り面半径、入射瞳径、または像空間での F ナンバーによる定義が必要なアパチャーを持つ光学系
- 次のいずれかのタイプに該当する光学系 :
- 視野タイプを角度に設定した有限共役光学系と無限共役光学系
- 視野タイプをセオドライト角度に設定した有限共役光学系と無限共役光学系
- 視野タイプを物体高に設定し、光線の角度を 90°未満とした有限共役光学系
[キャッシュの設定にフォール バック検索を使用:] (Use Fall Back Search During Cache Setup:)
このオプションを使用すると、強化されたレイ エイミングのアルゴリズムが十全に機能しない特定の軸外し光学系や非球面光学系で、強化されたレイ エイミングの動作を改善できます。レイ エイミングに問題がない限り、このオプションはチェックしない状態にしておくことをお勧めします。
[高度な収束を使用:] (Use Advanced Convergence:)
このオプションを使用すると、z 軸を中心として著しい回転がある光学系で、強化されたレイ エイミングのアルゴリズムの動作を改善できます。他のタイプの光学系でも、光線追跡の向上を期待できることがあります。光線追跡に問題がない限り、このオプションはチェックしない状態にしておくことをお勧めします。
[ステップ数:] (Number of Steps:)
強化されたレイ エイミング向けキャッシュの設定で使用するステップ数を選択します。このオプションにはデフォルト値 (10) の使用をお勧めします。ステップ数を多くすると安定性が向上しますが、レイ エイミングの演算速度が低下します。
[レイ エイミング ウィザード:] (Ray Aiming Wizard:)
「レイ エイミング ウィザード」を参照してください。
トラブルシューティング :
光束が絞り面全体を満たさないことや、「オブジェクトの座標を定めることができません。」 (Cannot Determine Object Coordinate) や「指定された像高へ到達する光線を見つけることができませんでした。」 (Cannot find rays to yield requested image height) などのエラー メッセージが表示されることがあります。このようなエラー メッセージは、レイ エイミングを有効にすれば解消できることが普通です。レイ エイミングを有効にしても、当初推定した最初の光線を追跡できない場合の次善の策として、光線グリッド上を検索する方法があります。この光線グリッドには、グリッド点間の距離を設定するスケールが必要です。このスケールは光学パワーを持つ最初の面によって設定します。
その面の半径がゼロの場合、その面の曲率半径または入射瞳径のいずれか小さい方の値に基づいて、検索スケールに上限を設定します。これは、念のための確認といえます。光学パワーを持ちながら半径がゼロという面は通常は考えられないからです。
その面の半径がゼロではない場合、その面の曲率半径または半径値の倍数のいずれか小さい方の値に基づいて、検索スケールに上限を設定します。
光学パワーを持つ最初の面に、半径を固定したソルブを適用することにより、レイエイミングの検索を容易にすることができます。このようにして検索の範囲を絞り込むことで、レイエイミングのアルゴリズムの収束に要する時間を短縮できます。エラー メッセージが表示されない場合でも、光学パワーを持つ最初の面のクリア半径に固定ソルブを設定すると、光学系の更新速度が大幅に向上することがあります。
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