グローバル最適化
従来のレンズの最適化の方法は、数十年間、減衰最小二乗法アルゴリズム (DLS) を使用するものでした。DLS は、多くの特長を備え、効率的であり、評価関数のローカルな最小値を探し出す際に適しています。ここでいうローカルとは、解空間での現在の位置で評価関数が増加することなく評価関数で得られる最小値です (これは、理想化したものであり、実際は、増加した評価関数前後の小さい領域でも DLS を実行できます)。
この問題を可視化するには、ハイキングに来ていて、丘の中腹から谷底を見下ろしている状況を想像してください。谷の最低地点を探しているのですが、霧がかかっていて、自分が立っている周囲のみが見え、谷を見ることができないとします。下りの方向を見極め、上りになるまでその方向に進みます。そこで新しい下り方向を見つけます。すべての方向が上りになる地点に到達するまでこの手順を何度も繰り返します。この最低地点が、ローカルな最小点であり、この谷の底です。
この方法の問題点は、ローカルな最小点に到達すると、さらに最適な最小点がほかにあるかどうかを知る方法がないことです (一般的な最適化の場合)。たとえば、この地点から丘の頂上に到達するまで任意の方向に上り、次の谷に向けて下り坂に進むと、徐々に新しいローカル最小点に到達します。この新しい最小地点が前の最小点より高いのか低いのかを知るには、実際にハイキングしてみる以外にありません。
コンピュータでは高速処理が可能なので、可能なすべての構成を試して、最良のものを探し出せばいいように思えるかもしれません。この問題の規模を感じ取るために、自由度が 6 の接合型二枚レンズを考えてみます (自由度を最適化の変数とします)。各変数が 100 の可能値を取ることができると想定すると (おおまかなサンプリング)、可能性のある異なる光学系が 1E+12 種類あります。それぞれの光学系の評価で、少なめの見積もりで 20 本の光線の追跡が必要とすると、面当たり 1 秒に 1,000,000 本の光線を追跡できる場合、必要な時間はおよそ 8E+07 秒、つまり 2.5 年です。評価に 100 本の光線を使用して 3 つの視野および 3 つの波長で評価する、エレメントが 4 つのレンズ (変数が 16 個) では、1E+32 回の光学系評価が必要です。これには、宇宙年齢の何十億倍もの演算時間が必要になります。
このような不合理な計算を必要としないグローバル最適化の手法があります。これらのアルゴリズムは、シミュレーション アニーリング、マルチスタート、エキスパート システム、ニューラル ネットワーク、およびその他を含みます。これらのアルゴリズムにはそれぞれ利点と欠点がありますが、ここではそれらについては触れません。
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