オブジェクトの配置
NSC エディタでは、オブジェクトの配置を指定できます。 NSC グループにオブジェクトを配置する場合の規則と制約事項は非常に重要です。オブジェクトは 3D 空間のどこにでも配置できます。また、オブジェクトは他のオブジェクトを基準にして配置できます。オブジェクト全体を他のオブジェクトの内側に配置したり、他のオブジェクトの隣に配置することもできます。
詳細については、「ノンシーケンシャル オブジェクト」、「ノンシーケンシャル光源」、および「ノンシーケンシャル ディテクタを参照してください。
座標系
各オブジェクトの位置は、x、y、z 座標と、x、y、z 軸回転の 6 つのパラメータによって定義されます。OpticStudio は、最初に x、y、z 方向にディセンタします (ディセンタは直交するので、順番は関係ありません)。さらに OpticStudio は、ローカル座標の x 軸のティルト (y 軸と z 軸が新しい方向に回転する)、次に新しい y 軸のティルト (x 軸と z 軸が回転する)、最後に新しい z 軸のティルトを実行します。これは、座標ブレーク面で順番フラグ = 0 を使用する場合と同じ規則です。オブジェクトのローカル座標からグローバル座標への変換を記述した式は以下のとおりです。,
ここで、添え字 g はグローバル座標、o はオフセット、l はローカル オブジェクトの座標を示します。マトリックス R は回転マトリックスで、ローカル座標とグローバル座標の方向を関連付けます。これらの式はもっとコンパクトに G = O + RL と記述することができます。ここで G はグローバル座標ベクトル、O はオフセット ベクトル、R は回転マトリックス、L はローカル座標ベクトルです。回転マトリックスのプロパティの詳細については、「グローバル座標基準面」を参照してください。回転の順序は逆にすることもできます。[オブジェクト プロパティ] (Object Properties) の [タイプ] (Type) セクションにある [グローバル XYZ 回転順番を使用] (Use Global XYZ Rotation Order) を参照してください。
基準オブジェクト
別のオブジェクトを基準にするオブジェクトの位置や回転を基準にすると有効な場合がよくあります。特に、グループ内に関連オブジェクトを配置し、グループ全体をディセンタまたはティルトする場合に有効です。
座標の基準になるオブジェクトが「基準オブジェクト」です。デフォルトの基準オブジェクトはオブジェクト 0 で、ノンシーケンシャル コンポーネント面の頂点です。ゼロより大きい正の値を指定した場合、そのオブジェクトの座標は、指定したオブジェクトの位置と回転に対する基準になります。これは「絶対」基準オブジェクトです。
基準オブジェクト番号が負の値の場合、基準オブジェクトは、現在のオブジェクト番号を負の基準オブジェクト番号に加算することで決定されます。これは「相対」参照オブジェクトです。たとえば、基準オブジェクトが、オブジェクト 8 の -3 の場合、基準オブジェクトは 5 になります。8 - 3 = 5 だからです。相対基準オブジェクトは、オブジェクトの各グループをコピーしたり、貼り付ける際に特に有効です。グループ内のすべてのオブジェクトが、そのグループの最初のオブジェクトを相対参照している場合は最も簡単に実装できます。
基準オブジェクトを使用する場合、回転とオフセットのマトリックスは以下のようになります。
G' = O' + R'G
G' = O' + R'[O + RL]
G' = [O' + R'O] + [R'R]L
任意の数の座標基準のネストがサポートされています。つまり、オブジェクト 9 をオブジェクト 5 の座標フレーム内に配置し、そのオブジェクト 5 をオブジェクト 3 のフレーム内に配置することができます。唯一の制約は、オブジェクト リスト内で基準オブジェクトを、参照先の座標のオブジェクトよりも前に置く必要があるということです。オブジェクトの座標や角度を手作業で再計算せずに基準オブジェクトを変更する方法については、「[基準オブジェクトの変更] (Modify Reference Object)」を参照してください。
内部配置、隣接、重複
他のオブジェクト内に光源を配置する方法や、[内部配置] (Inside Of) 列の絶対値および相対値の使用方法については、「オブジェクト内への光源の配置」を参照してください。
オブジェクトを別のオブジェクトの内部に配置したり、隣接させたり、重複させたりすることで、オブジェクトを結合してさらに複雑なオブジェクトを作成できます。こうした複合オブジェクトの光線追跡プロパティは、各種オブジェクトの位置およびタイプと、それらが接触するのか重複するのかによって決まります。接触というのは、オブジェクトの境界面上の 1 つ以上の点が、3D 空間で、もう 1 つのオブジェクトの境界面上の点と同じ位置にあるという意味です。ミラー オブジェクトは任意の場所に配置でき、制約なしに、他のオブジェクトと接触させたり、一部または全部を他のオブジェクトの内部に配置することもできます。光線は常に、ミラー面で反射して、その光線が進んできた経路内にある媒質に戻ります。
貼り合わせ距離 (レンズ ユニット)
レンズがプリズムの 1 つのフェイスに接触しているときなど、2 つの NSC オブジェクトが接触した状態で配置されている場合、数値の丸めが原因で生じるほんの少しの距離を、光線追跡アルゴリズムが 2 つのオブジェクト間で検出することがあります。オブジェクトを 3D 空間で回転させ、近づけて配置する場合に、スプレッドシート エディタに有限の桁数を入力したために、正確にはぴったりと接触しないこともあります。
貼り合わせ距離とは、それより短いと 2 つのオブジェクトが接触していると見なされる距離のことです。オブジェクトを離すときの距離を、貼り合わせ距離と近い値にしないことが重要です。2 つのオブジェクトを接触させる意図がある場合は、オブジェクト同士の最大間隔を貼り合わせ距離の何倍も小さい数値にする必要があります。2 つのオブジェクトを離す意図がある場合は、オブジェクトの間隔を貼り合わせ距離の何倍も大きい数値にする必要があります。オブジェクトの間隔が貼り合わせ距離と非常に近い値の場合、光線追跡の矛盾や形状エラーが発生します。これを防ぐには、オブジェクトの間隔か貼り合わせ距離のいずれかを調整します。
貼り合わせ距離は、光線追跡の最小伝播長も決定します。光線とオブジェクトが前の交差から、貼り合わせ距離よりも短い間隔で交差している場合、その交差は無視されます。
貼り合わせ距離は、一般的な曲面の光線追跡に関連付けられる公差でも使用できます。OpticStudio では、光線と面の交差の解のエラーが、貼り合わせ距離の 1/5 を下回る距離になるまで、処理が反復されます。
ほとんどの場合、貼り合わせ距離のパラメータを調整する必要はありません。貼り合わせ距離は 1.0E-10 ~ 1.0E-03 の範囲にする必要があります。
ネストするオブジェクトの制限
ネストするオブジェクトの最大数には、ユーザー定義の制限がかかります。これにより、相互のオブジェクト内に配置できるオブジェクト数の上限が定義されます。たとえば、ネストするオブジェクトの最大数が 3 の場合、オブジェクト 3 は 2 の内部に配置でき、このオブジェクト 2 はオブジェクト 1 の内部に配置できます。この場合、ネストの 3 段階の深さそれぞれに、任意の数のオブジェクト グループが存在することになります。オブジェクトの 1 つのコレクションにおけるネストの合計数には制限が適用されますが、NSC グループ内ではこうしたコレクションが任意の数だけ存在できます。ネストするオブジェクトの最大数は、システム エクスプローラの [ノンシーケンシャル] (Non-sequential) セクションで設定します。ネストの制限を、モデル化する光学系で必要とされる値以下に設定すると、メモリを浪費せずにすみます、ただし、最小設定は 4 です。
ネストする体積
OpticStudio では、光線伝播における屈折率を追跡し続ける必要があるため、屈折する材質からなる体積のネストはさらに複雑になります。覚えておくべき規則は、光線が空間内のまったく同じ点で複数のオブジェクトに到達した場合、NSC エディタに最後にリストされたオブジェクトが、その点における面または体積のプロパティを決定するということです。
光線が空間内のまったく同じ点で複数のオブジェクトに到達した場合、NSC エディタに最後にリストされたオブジェクトが、その点における面または体積のプロパティを決定します。
たとえば、回折グレーティング レンズがオブジェクト 1 で、空気またはガラスでできた同じ厚みと半径の非グレーティング レンズ (オブジェクト 2) が最初のレンズの内部に配置されている場合、オブジェクト 1 と 2 の両方を含むゾーンに到達する光線は、オブジェクト 2 にのみ到達したかのように動作します。
これにより、「穴」のあるオブジェクトやその他の複合オブジェクトを定義できるようになります。さまざまな複合ソリッド形状を作成するために、オブジェクトは 1 つ以上のフェイスに接触したり、ネストしたり (しなかったり)、部分的に重複したりします。

ネストする面
ここまでに定義したネストの規則は、屈折または反射する材質からなるソリッド体積に適用されます。空間内の同じ点に複数の面が存在するという意味では、一部の特殊な面も「ネストしている」ことになります。この規則は体積に適用されるものと似ていますが、面は屈折できません。
面にはソリッドと同じ次の規則が適用されます。つまり、光線が空間内のまったく同じ点で複数のオブジェクトに到達した場合、NSC エディタに最後にリストされたオブジェクトが、その点における面のプロパティを決定するということです。
光線が空間内のまったく同じ点で複数のオブジェクトに到達した場合、NSC エディタに最後にリストされたオブジェクトが、その点における面のプロパティを決定します。
面については、光線の交点に複数の面が存在する場合、いくつかの規則を考慮する必要があります。
- 最後に記述した面によって面のプロパティが決まります。
- 最後に記述した面が反射性 (ミラー) の場合、光線は反射します。
- 最後に記述した面が吸収性の場合、光線は吸収されます。
- 最後に記述した面が反射性でも吸収性でもない場合、その面は光線によって無視されます。
- 面オブジェクトが反射性でも吸収性でもない場合、または面オブジェクトの後に体積オブジェクトを記述していない場合、その面オブジェクトは体積オブジェクトと境界を共有しません。境界を共有する場合、その境界のプロパティは体積オブジェクトで定義します。
- 互いの境界を共有できるのは標準の面オブジェクトのみです。その他のタイプの面オブジェクトのネスティングには、ソフトウェアの今後のバージョンで対応する可能性があります。
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