フレネル回折

フレネル数が小さい場合に適した理論はフレネル回折です。詳細な説明とその派生理論については、概要で示した Goodman 氏の著作を参照してください。フレネル理論における主要な前提は、計算対象の電界が初期電界に近すぎない位置にあるということです。つまり、z2 – z1 = Δz である場合、Δz は、z2 の電界が決まる領域と比べて大きいということです。別の言い方をすると、ビームが急激に発散しないということです。きわめて明るい F ナンバーのビームは、フレネル回折理論では正確にモデル化できません (これらの近似についての詳細は、ヘルプ ファイルで「アルゴリズムの前提条件」を検索してください)。

フレネル領域における電界分布は以下の式で求められます。

ここで、

上記の式の各項は、物理的に有用な解釈ができます。先頭の項は、ビームが伝播するにつれ、位相が z 軸に沿って変化することを示しています。これは前述の平面波の場合と同様です。振幅も距離とともに直線的に減少します。または、強度 (E*E) が距離の 2 乗で減少します。

2 次位相係数と呼ばれる q( r, Δz ) の式は、位相の基準が 半径 Δz の球面であることを示しています (厳密には放物面ですが、フレネル理論の展開で r2 « Δz と仮定しています)。

これは非常に便利な特性です。基準球に対する位相差を知るだけで、電界を表現できるようになるからです。これにより、ビームの位相を正確に定義するために必要なサンプル点の数を大幅に減らすことができます。フレネル プロパゲータを使用する場合は、ビーム ウェストからの距離を半径とする基準球を基準として電界の位相を測定します。この半径は、ガウス ビームの位相曲率半径とは同じではありません。正の位相は、伝播方向とは関係なく、基準球から見てローカル座標の +z 軸方向に波面が進んでいることを示しています。

q( r, Δz ) のもう 1 つの重要な特性として、Δz が大きくなるにつれ、q( r, Δz ) の位相の変化が緩やかになることが挙げられます。

これは、T(Δz) 演算子とは逆の性質です。この演算子では、Δz が大きくなるにつれ、位相の変化が激しくなります。

したがって、フレネル回折は、フレネル数が小さいときに効果的です。

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